【第五話】フラメンコギター独学の真相と決心

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フラメンコギターを弾く。

今となっては当たり前の存在になっているが、
そんな運命的な出来事があって始めた。

もしあの時トマティートの演奏に触れなかったら…
フラメンコギターをやっていたかどうかわからないし、

スペインに行ってなかったら
間違いなくフラメンコ出会うことはなかった。

そして、当たり前になるまでにも行く手を阻む障害が
いくつも自分に襲いかかってくるのである。

要は、全然当たり前ではないのだ。

興奮冷めやらぬ状態でピソへと帰った。

翌日、

目が覚めたらすぐに、
グランビア通りにある

「キヨスク」へと向かった。

いったい何しに行ったかというと、
「ゼグンダ・マノ」という中古品情報が
掲載されている新聞を買いに行ったのだ。

もちろん、中古ギターを探すためにだ。

早速、「売ります」の欄をみると、
無数のギターの数が掲載されている。

しかしどれも思ったより高いギター
ばかりで自分にはとても手が出なかった。

そんなことが数日間続き、ついに見つかった。

3000ペセタのクラシックギター

そのギター持ち主は、
「パロス・デ・ラ・フロンテーラ通り」に住んでいるという。

早速、電話を掛けてみると、年配の女性が出た。

「これから行っても大丈夫ですか?」

と聞くと、「今日は一日中いるからいつでもどうぞ…」との返答だった。

こっちは、居ても立っても居られない状態。

「今すぐに行きます!」

と言ってすぐに向かった。

自分の住んでるピソから歩いて約30分くらいかけて到着。

呼び鈴を鳴らすと、想像してたよりもずっと
年齢が行ったお婆さんが中からギターを持って出てきた。

(きっと、90才くらいは行ってるだろう。)

震える手からギターを手渡されると、とりあえず壊れてないか
一通り確認して3000ペセタを支払いギターを受け取った。

ケースはなく、裸のままのギターだ。

この間、信じられない事に一言も言葉を交わさなかったが、

心の中では溢れるような嬉しさが込み上げていた。

ケースに入ってない裸のギターを
ぶつけないように気をつけながらピソに持って帰ると、

今度はすぐにフラメンコギターの先生を探し始めた。

「ゼグンダ・マノ」にはそういった情報も載っているのだ。

さて、その中にひとりだけ載っていた、
「アントニオ・アレーナス」というギタリスト。

(後で知ったのだが、「カマロン」がまだパコとやる前に
伴奏をしていたそうだ。そのレコードを2枚ラストロで買った。)

人から聞いた話だが、昔は相当有名なギタリストだったらしい。

もう1人は、知り合いが教えてくれたギタリスト、ファン。

とりあえず、まずはアントニオに電話を掛けてみた。

「フラメンコギターを始めたいと思って電話しました。とりあえずどんな事するのか見たいです。」

と言った筈だが、

「オッケー!明日の四時に空いているからそれぐらいにおいで…」

とアントニオがいった。

多分、何かが食い違ってる気はした。

そして、翌日…

見学に行く気なので、大事なギターは家に置いて向かった。

やる気満々なので、30分前には着くように向かった。

駅の名前は忘れてしまったが場所は割と中心街にあった。

それまで、一度もスクールというものに
行ったことはないので、自分の頭の中では完全に
看板が出ている「フラメンコギタースクール」があると思い込んでいた。

思い込みから間違いというのはよく起こる。

いくら探しても見つからないのだ。

ついに約束の時間が過ぎてしまった。

ということはあれから30分以上もさ迷ってるわけだ。

看板は出てないが、何回も同じ場所を
通り過ぎていた言われた住所の呼び鈴を鳴らしてみた。

中からしわがれた声で返事があった。

「ギターの見学に来た日本人です。」と答えると、

ガチャ、

と扉が開いた。

想像してた雰囲気の人ではなくかなり年老いた人だった。

奥の方を見るとベッドの上にはギターが横たわっている。

(やはりここだったんだ…)

アントニオは

「ギターはどうした?」

と訊いてきた。

「あ、見学のつもりで来たから家に置いて来ました。」

と答えると

「えっ………。どうやって教えたらいいんだよ?」

とアントニオが言った。

(この瞬間、自分が言ってることが全く伝わってなかったことが判明した。)

こっちはスクールの見学に来たつもりだったが、
アントニオには全然伝わっていなかったのだ。

続いてアントニオは言った…

「約束の時間を過ぎて来て、しかもギターまで持ってこないなんて…。
ワシは今までお前のためにずっと待ってたんだぞ!本当になんて奴だ!帰れ!」

と怒りまくった。

まぁ、仕方がない。

もちろん、自分としては悪気は全くなかったが、
目の前には、怒りを通り越してうなだれるアントニオがいた。

気を取り直してもう1人の先生に連絡をしよう!

と即座に電話をすると

「今夜、19時にラバピエスのバルで待ち合わせよう。」

と言ってきた。

「わかりました!ギター持って行きます。」

と今度は間違えがないように答えた。

18時半頃にバルに到着すると、
ファンはすでに数人と飲んでいた。

「まぁ、中に入って一緒に飲もう!」

と、ファンが言ってきた。

他の連中もフラメンコのアーティストらしく、
ギタリストや踊り手、歌い手もいた。

しばらく話してると、中の一人が、

「ファンは本当にいいギタリストで
習えるのは幸運なことだよ!いいギタリストを選んだよ君は…」

と言ってきた。

(こっちはファンのことはいま初めて見た訳で、演奏も聴いたことがない…)

どう答えていいかわからずにいると、

ファンが

「ギタリストで誰が好きなんだい?」

と尋ねてきた。

すかざすに

「トマティートです。」

と答えると、

「トマティートか…。うん、素晴らしいギタリストだ。」

と答えた。

続いて、ファンはこう言ってきた。

「ギターはどれくらい弾いているんだい?
何が教えてほしい?やっぱりブレリアか?」

(ブレリアって一体なんだ?何が教えてほしいと言われても…)

と内心思いつつも、

「ギターを弾いたことがないから、
まずは弾き方を教えてほしいです。」

と答えた。

周りはにこやかに笑って、

「大丈夫、自分の弾きたいように弾けばいいんだよ!」

と答えた。

ファンが続いて、

日本人のギタリストの名前を立て続けに言い始めた。

「知っているかい?」

えっ?

こっちはまだギターを持って2日しか経ってないし、
そもそも日本でフラメンコがあるというのも知らない。

答えに困ってると、ファンはバルの店員になにやら話しに行った。

店員はこちらをチラッと見ながら、頷いた。

どうやら、ここでクラスを始めるようだ。

スペインはなんでもありだな…と思った。

ファンはギターケースから自分のギターを出した。

そして、自分も裸のギターを用意した。

ファンが言った。

「いま、自分のお気に入りで弾いてるのがある。
それを教えよう。シギリージャだ。」

と言って弾き始めた。

目の前で演奏が始まったが…こっちはチューニングもわかっていない。

ファンはこっちを見て促した。

そんなこと出来るわけがないと思ったが、
仕方なく指の動きを真似て動かしてみた。

ファンの目が一瞬にして鋭くなった。

「何にも弾けないじゃないか…。
そんな奴に一体なにを教えたらいいんだよ。」

「君はいま何才だ?」

と言ってきた。

「25才です。」

と答えると、

「そりぁ無理だ。いいか、ギターっていうのは
20才越えて弾けるようになった奴なんていないんだよ。」

(えっ、そうなんだ…。楽器っていうのは20才を過ぎると無理なんだ。)

やっと心からやりたいことに出会ったのに
年齢的な壁があると知り、

かなりショックを受けていると、
ファンは続けてこう言った。

「20才越えたら楽器は終わりだ。
10代後半でもキツいんだよ。
関節は固くなって指が滑らかに動かない。
諦めたほうがいいよ。クラスはやめよう。」

こうして、初めてのクラスは幕を閉じた。

生まれて初めて感じた年齢による問題…

自分は習うことすらできないのか…と思った。

何しろ25才である。

一般的にはかなり遅すぎるらしいのだ。

しかし何故か、自分の中では
諦めるという選択肢は全く見つからなかった。

この瞬間…

自分は独学で学んで行くことを決心した。

 

つづく

【第六話】闇の中で知ったストリートの世界…そして路上ギタリストへ

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